戸籍法86条以下の規定に従い、戸籍法87条の届出義務者が、死亡に事実を知ってから、7日以内に市役所に死亡の届出をおこないます。その際に、診断書または検案書が必要になります。
亡くなった方の所得について、亡くなった年度の確定申告が4か月以内に必要です。詳しくは国税庁ホームページ納税者が死亡した時の確定申告(準確定申告)をご覧ください。
お葬式が終わった後、なるべく早めに死亡した
方の財産である、相続財産の全体を確認します。葬儀が済んで間もないのに、相続の話を行うのは不謹慎だと思われる方もいるかもしれませんが、相続については、法律上の手続期間があるものが多く、注意しないと間に合わなくなってしまうことがあるためです。その手続の選択を行うために、相続財産の確認が非常に重要なのです。
相続財産には、銀行預金や現金、土地や建物の不動産、自動車や貴金属類をはじめとした動産、建物や土地の賃借権及び社債などの債権のような、プラス財産と、借金などのマイナス財産があります。これらはいずれも相続財産であり、相続が開始したからといて、相続人にプラス財産のみが移転するわけで訳ではありません。マイナス財産のほうが多く、借金のみが残ってしまったという話もあります。また、場合によってはプラス財産とマイナス財産のいずれが多いか分からない場合もあります。その場合、後に述べる「相続人はだれか?」をご参照ください。
相続財産の確認と並行して、遺言書があるのかないのか確認が必要です。遺言の有無は、亡くなった方の最終意思として、相続について非常に大きな影響を与えます。詳しくは遺言書のすすめをご参照ください。
相続人は、民法887条および890条に規定があります。
具体的には、亡くなった方に妻や夫などの配偶者がある場合、配偶者は常に相続人になります。
配偶者以外の相続人としては、なくなった方の@子などの直系卑属、A親や祖父・祖母などの直系尊属、B兄弟姉妹 です。
このように、民法上1次的に相続人と規定されている人を「推定相続人」といいます。なぜ「推定」なのかといいますと、民法上推定される相続人であっても、亡くなった方を殺害した
相続人や、亡くなった方を強迫して遺言書を作成させたなどの場合、民法891条の規定により、相続欠格に該当し、その推定相続人は相続を受けられないからです。
また、亡くなった方を虐待したなどの場合、
亡くなった方の意思で、生前や遺言で、民法892条の推定相続人の廃除を行うことができます。この場合も、その推定相続人は相続を受けることができません。
さらに、民法938条の相続放棄を推定相続人が行えば、その者は最初から相続人ではなかったという取扱になるからです。
相続をうけるかどうかを「相続の承認・放棄」といいますが、これは推定相続人の意思に従います。ただし、相続を承認・放棄するには、期間が非常に重要になってきます。民法915条では、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定しています。相続の承認・放棄には以下の3つのパターンがあります。
(1)単純承認
民法920条では、「無限に被相続人の権利義務を承継する。」と、亡くなった方の権利と義務の一切を相続する旨が規定されています。上記の3ヶ月の期間を何もせずに経過することで、単純承認となるケースが多くあります。他にも、相続人が相続財産を処分したり、相続財産を隠して限定承認や放棄を行った場合も、単純相続となります。
(2)限定承認
民法922条以下の規定で、相続財産が全体でプラスなのかマイナスなのか分からない場合に有効な手段です。相続人が複数いる場合には、全員で行う必要があり、上記3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。限定承認を行うと、亡くなった方の残したプラス財産の範囲でのみ、マイナス財産の清算を行うこととなり、マイナス財産が多い場合でも、相続人はそれ以上義務を負いません。また、マイナス財産を清算した後にプラス財産の残りがある場合、相続人の財産となります。
(3)放棄
民法938条以下の規定で、相続財産が全体でマイナスなのが明らかな場合や、プラスでも、家庭の事情や様々な理由により、相続人である地位を放棄することができます。相続の放棄は、各相続人が自分の意思で単独で行うことができますが、これも上記3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
よく、「相続を放棄した」という言葉を聞きますが、厳密な意味では、上記のように家庭裁判所に対して行う場合のみが該当します。なかには、後で述べる「遺産分割協議」で、共同相続人の話し合いで、特定の財産を特定の相続人に相続させることを指して、相続を放棄したと言われる方もいらっしゃいますが、法的意味やその効果については、全く異なるといっても過言ではありませんので、ご注意ください。
よくドラマで、「私にも相続の権利があるんだから、財産をよこせ」なんてシーンがありますが、この割合について、民法900条以下に法定相続分の規定がありますが、以下のとおりです。
@相続人が配偶者と子の場合、配偶者2分の1、子全員で2分の1を等分
A相続人が配偶者と直系尊属の場合、配偶者3分の2、直系尊属全員で3分の1を等分
B相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1を等分
(2)特別受益・寄与分の計算
このように法定相続分が計算された後、亡くなった方の生前に特別の財産贈与(例:独立資金や婚姻費用など)を受けた相続人は、民法903条の特別受益者の計算により減額され、逆に亡くなった方の生前にその事業や病気の看護などに特別の貢献をした相続人には、相続人の協議により、民法904条の3の特別寄与分が加算されます。
(3)遺産分割協議
お金など分割しやすい財産であれば、単純に割合で計算することも可能ですが、不動産や貴金属類などの動産などは、割合で分割することが困難で、相続人全員で話し合いを行うことになります。これが「遺産分割協議」と言われるものです。この遺産分割協議は、一部の相続人間で行う事はできず、相続人全員で行う必要があります。
協議の内容としては、民法906条に「遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と基準が示されていますが、要は現実的で合理的な分割を行うなら、話し合いでどのようにでも可能であるということです。
(4)特別受益・寄与分・遺産分割協議の不調
この遺産分割協議は、先の寄与分の協議とあわせて行われる場合が多いのですが、協議がこじれて、相続人間の争いになる場合もよく見受けられます。その場合、家庭裁判所に特別受益・寄与分と遺産の分割を請求することができます。しかし、特別受益に関しては、特別受益のみを単独で裁判所に確認を求める事はできません。
遺産分割協議がこじれた場合、家族親族間に後々の遺恨を残すことになりまねませんが、遺言書が存在した場合、亡くなった方の最終意思ということで、遺言書の内容が優先されます。この場合、家族間の紛争になりにくいので、遺言書は非常に有効です。詳しくは「遺言書のすすめ」をご覧ください。
(5)相続人に未成年者がいる場合
相続人に未成年者がいる場合、特別受益の計算と遺産分割協議を行うには、未成年者の特別代理人を家庭裁判所で選任してもらう必要があります。法定相続分で相続を行う場合、特別代理人は必要ありません。
民法上、未成年者の保護を目的として、親権者がその法定代理人として、親権者が子供のことを考えて様々なことを行いますが、
親権者が話し合いの当事者である場合を利益相反行為といいますが、親が代理人であることをいいことに、自分の都合で子の利益を侵害するおそれがある行為として、民法上禁止されています。
そのため、今回に限り第3者に親権者に代わる代理人役を行ってもらう必要があるため、家庭裁判所に選任してもらうのです。
金額で計算すると割り切れるのですが、実際には割り切れない金額であったり、今回のように土地や建物などで、分割を行うのが困難な場合もあります。また相続を行う場合に相続税が発生しますが、その税負担についても留意が必要です。一般家庭では、相続税控除額が適用される結果、現実には相続税が発生しないケースも多くあります。下記に相続税控除の例を掲げますので、詳しくは国税庁ホームページまたは最寄の税務署、税理士にご確認ください。
●基礎控除額
5000万円+(1000万円×法定相続人の数 )たとえば相続人が3人の場合、8000万円までは控除されます。
一般家庭の場合、相続税が発生することはまれです。
●配偶者控除
配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が1億6000万円までか、1億6000万円を
超 えていても、正味の遺産額の法定相続分に応ずる金額までであれば、配偶者には相続税はかかりません。
●未成年者控除
相続人が未成年者の場合は、20歳に達するまでの年数1年につき6万円が控除されます。
●障害者控除
相続人が障害者の場合は、70歳に達するまでの年数1年につき6万円(特別障害者の場合は12万円)が控除されます。
遺産分割協議書をもとに、実際に土地や建物の相続登記を行い、株券や銀行口座の名義変更を行い、場合によっては相続税の申告を10ヶ月内に行うことで、相続手続が完了します。
不動産登記に関しては、法定相続分とは異なる割合で遺産分割協議を行っても、相続登記をしなければ、その協議内容は、協議を行った相続人以外の第三者に対抗できないということがあります。
たとえば、土地や建物について、奥さんに単独で相続させる遺産分割協議がなされても、他の相続人に借金があった場合、その貸主である金融機関が、その相続人に代位して法定相続分で相続登記を行い、その相続人の持分に差押の登記などを入れてしまった場合、その貸主には、遺産分割協議の内容である「土地や建物は奥さんのもの」と言う主張は出来ないことになります。
また、相続登記を行わないままほうっておくと、翌年の固定資産税については、市役所等の便宜の方法で課税がなされ、実際の所有関係と課税関係が狂ってしまうこともありますし、相続人がなくなってしまった場合は、遺産分割協議を行う者が、一世代下った親族に移ることになり、遺産分割協議がスムーズに行かないこともあります。
相続登記は決して義務ではなく(相続税や準確定申告については義務)、相続登記を行っていないケースもよく見受けられますが、できる限り早めに相続登記を行うことをお勧めします。