商品代金を支払ってくれない! 貸したお金を返してくれない! などの場合に、裁判を起こすことなく、裁判所が相手方にお金の請求を行ってくれる手続が、支払督促手続です。
支払督促は民事訴訟法第382条以下に規定があります。以下に要約すると
@金銭などの請求
金額の上限や下限はありません。
A債務者(相手方)の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に対して申立をおこなう。
裁判官が行う判決や決定と異なり、確実な証明を行う必要はなく、「一応それらしい」という程度の疎明で足りるとされています。
B裁判所書記官は、債務者(相手方)に確認をせずに行うことができる。
C支払督促が確定すると、裁判の判決と同じ効力が認められ、国による強制で、債務者に支払をさせることができる。
D Aの申立は、インターネットでも行うことが可能となった。
メリット :
@簡単な疎明方法で、相手方に確認することなく、自動的に発せられるので、非常に簡便で、かつ強制力を伴う手続である。
A基本的に、手続き費用が安く、日数が短い
B内容証明郵便以上に強力な手段で、強制力を伴い、消滅時効の中断事由になりえる。(内容証明郵便では催告なので、6ヶ月以内に裁判手続を行わないと、時効中断にはならない。)
デメリット:
@相手方から支払督促に対する異議が出された場合、相手方住所の裁判所で裁判が開始されるので、遠方の相手方の場合には、異議申立後の手続が困難な場合がある。
A相手方の異議申立には、特に理由は必要ないので、異議が出されやすい。
B相手方にとっては、いきなり裁判所から督促状がきた!となりかねないので、その後の関係が悪くなるおそれがある。
C相手方の住所など所在がわからない場合など、支払督促が送達(郵送)できないと、行うことができない。また、外国に居住するものについては行うことは出来ない。(裁判なら、行うことができる。)
@単に相手方が支払いを滞らせている場合など、相手方が争わないと思われる場合。 しかし、異議申立には理由が要らないので、判断に注意が必要。ただし、異議が出された場合でも、他の手段を講じる事は可能です。
A遠方の相手方なら、@について判断を要するが、比較的近郊なら、さほど気にする必要はない。
B消滅時効時効成立間際の場合
Cとにかく金銭を早く回収しないと、逃げられてしまうおそれがある場合
D相手方の所在が明らかな場合
などが考えられます。
@支払督促が送達されなかった場合
上記デメリットのCのとおり、送達がされないと、申し立てた債権者に通知がされます。この通知を受けた日から2ヶ月何もしないと、支払督促はされなかったものとみなされ、無効になります。
A支払督促が送達された場合
(1)送達後2週間以内に相手方から、異議申立が出た場合
支払督促の効果が失われ、強制力は与えられません。この場合裁判手続に移行します。
(2)送達後2週間以内に相手方から、異議申立が出なかった場合
仮執行宣言付支払督促の申立を簡易裁判所に対して行います。これは、支払督促に対して強制力を付与する手続です。申し立てた債権者が仮執行宣言付支払督促の申立が可能になった後30日以内に手続を行わないと、支払督促の効力が失われます。
(3)仮執行宣言付支払督促が送達された場合
相手方(債務者)から2週間以内に異議申立がなければ、相手方(債務者)は異議申立を行うことができなくなります。
相手方(債務者)から2週間以内に異議申立があっても、仮執行の効力である強制力は失われません。この場合裁判手続に移行しますが、裁判で負けない限り、強制力は維持されます。
B強制執行手続
支払督促に仮執行宣言が付与されたり、異議申立期間が経過して、支払督促が確定した場合、裁判所に執行文の付与を求め、その文書で裁判所に対して強制執行の申立を行うことができます。多くの場合、強制執行に至る前に任意で支払われる場合もありますが、現実の金銭の回収手続です。