支払督促が届いた!どうするの?(異議申立)

支払督促が裁判所から届いた場合、多くの人はどうしたらいいのか分からず、困惑します。支払督促は裁判手続とは異なり、判決によらずして国の強制力を伴う金銭等の請求手続として、民事訴訟法第382条以下にその規定があります。詳しくは、「督促したい!どうするの?」に記載がありますが、「訴状が届いた!どうするの?」の訴状と同じように、放っておくと不利になることがあります。

また、民事訴訟法の規定に依り、裁判所書記官が申し立て人の言い分のみを聞いて、半ば自動的に督促状を発送しなければならないため、場合によっては、不当な督促状が発送されてしまうおそれがあります。

ここでは、督促状が送りつけられた債務者側に立って、いわれのない督促状や、債務者にも言い分のある督促状などが届いた場合に、債務者の正当な権利を行使するための方法をご紹介します。

 

本当に裁判所の支払督促か?

最近では、いわゆる出会い係サイトの架空請求が社会問題となっていますが、架空請求が裁判所の支払督促の手続による事は、ほとんどありません。詐欺的架空請求業者は、何らかの名簿などを元に、何の根拠もなく、無差別に「督促状」なるものを送りつけていることがほとんどで、裁判所を経由する事は事実上ありえないからです。しかし、最近の事務機器の性能向上により、いかにももっともらしい文書を作成する場合もありますので、ご注意ください。身に覚えのない架空請求の場合は、放っておくのみで、こちらから連絡をとる事は厳禁です

しかし、一部マスコミの報道のとおり、裁判所の支払督促や裁判手続を悪用した架空請求も発生しております。裁判所からの正式な手続の場合、ほうっておくと架空請求が本当の請求に名を変えてしまうこともあります。判断に困った場合、発送もとの裁判所またはお近くの消費者生活センターや弁護士・司法書士に相談されることをお勧めします。間違っても請求業者に直接連絡しないでください。

 

架空請求以外でも、「督促状」なる名称を使用することがありますが、その場合請求者の住所・氏名または会社所在地(本店・支店)・会社名が記入されている場合で、身に覚えのある請求の場合は、民法上の催告としての効力を有しますので、その場合は事例に応じた対処が必要な場合がありますが、ここでは主旨が異なるので、割愛します。

 

裁判所からの支払督促には、裁判所名や裁判所書記官の氏名と押印があります。通常支払い督促の封筒の中に、裁判所作成の支払督促についてのパンフレットが入っていますので、パンフレットの内容についても、あわせて確認してください。

 

支払督促到達後の対処

支払督促到達後、2週間が経過すると、申し立てた債権者は、仮執行宣言付支払督促の申立てが可能になります。この「仮執行宣言」ですが、「仮」とは言うものの、実質上、国の強制力を伴うもので、非常に強力です。この仮執行宣言に基づく強制執行手続が開始されると、給料の差押や財産の差押を受けることがありますので、もし、債務者であるあなたにもに言い分があれば、早めに裁判所に対して異議の申立てを行ってください。

 

支払督促到達後、2週間以内か、2週間を超えたとしても、債権者が仮執行宣言付支払督促の申立てを行う前に、債務者が異議申立を行うことで、支払督促手続きはその役目を終え、裁判手続に移行します。つまり、債務者たるあなたの言い分を聞いてもらえる裁判手続が始まるのです。

 

仮執行宣言付支払督促が届いた後、2週間以内であれば、債務者は異議の申立てができますが、この異議申立は、仮執行宣言の効力を止めることができません。しかし、裁判手続に移行して、債務者の言い分を聞いてもらえる機会ができますので、このようなケースでも、正当な事由がある場合は、あきらめずに異議申立を行ってください。

 

通常訴訟への移行後

上記異議の申立で、裁判手続きに移行しますが、その後は通常裁判となります。この裁判手続で、債権者は原告となり、債務者は被告となって、双方の言い分を主張し、証拠を提出して論戦を行うわけですが、「訴状が届いた!どうするの?」記載のように、異議申立を行ったままで、放りっぱなしにしておくと、欠席裁判で被告敗訴と言う結果になりかねませんので、注意が必要です。早めに弁護士又は司法書士に相談することをお勧めします。

 



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